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ポストモダン解析学: 補題5.13

これは何?

補題5.13の行間(?)が気になって、結局2日ぐらい考えたら分かったので書く。引用は全て丸善出版ポストモダン解析学 原書第3版 J.ヨスト著」から。引用中の赤字強調は全てashiato45による。

問題

状況設定

  • Iは実数の閉区間で、I=[a, b]
  • DはIの可算部分集合*1
  • fはIから実数への関数。以下の性質を満たす。
    • fはI上連続
    • fはI-D上で微分可能(I-D=I \cap D^c)
    • 任意のI-Dの元xについて、f'(x)\le M
    • \rho_nはDの番号付け(Dの定義により、番号付けは可能である。)
    • ηは任意の正実数。

証明しようとしているもの

f(b)-f(a)\le M(b-a)+\eta(b-a+1)

本題

証明から問題の箇所を引用します。

A:=\{\xi\in I: a\le \zeta <\xiとなるすべての\zetaf(\zeta)-f(a)\le M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}とおく。a\in Aなので、Aは空集合ではない。c:=\sup Aとおく。fの連続性よりc\in Aであり…(略)

というのが本文なのだが、「fの連続性」からどうしてc\in Aが出るのか分からなかった。cがここに書いてある条件を満たしているのかとも思ったのだが、この直後にc\in Aそのものから
f(c)-f(a)\le M(c-a)+\eta (c-a)+\eta \sum_{\rho_n <  c} 2^{-n}
を導いているのでそうではないっぽい。

「fの連続性より」で何がおこったのか。

かいとう

登場人物が多くて大変なので、問題と直接の関わりがあるかは分からないがとりあえずいろいろ調べてみる。状況をなんとか目視しやすくしてみる。

まず、Aの定義からして\xi'<\xi\xi \in Aならxi'\in Aなことがわかる。*2よって、Aはぶちぶち途中で千切れたりせず、A=[a,c ] A=[a,c)のどちらかであることが分かる。
f:id:sle:20130427230710p:plain

図の下の青字にあるように、AがA=[a,c ] だろうがA=[a,c)だろうがAの任意の点\zeta\in [a,c)
f(\zeta)-f(a)\le M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}がなりたつ。なぜなら、cはAの上限なので、cがAに属するとすればAの定義そのままで言え、cがAに属さなかったとしても、cよりちょっとだけ小さい点c-\epsilonを十分小さい正数εで表わせばこれはAに属するので、任意の正数εと任意の\zeta\in [a,c-\epsilon] について
f(\zeta)-f(a)\le M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}がなりたち、結局同じことになる。証明おわり。なんなら、一方の点を一個とって、それが他方に入ることを言ってもいい。

ではAから出てしまったらどうなるのかというと、それはf(\zeta)-f(a)M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}の大小はどちらだか分からなくなってしまう。先程言ったように、「千切れて」とびとびにf(\zeta)-f(a)\le M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}がなりたっているかもしれないし、ひょっとしたらそんな区間はないのかもしれない。

してみると、cは「aからここまでは確実にf(\zeta)-f(a)\le M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}と言える」という右端の限界だということになる。そしてこれが大事なのだが、緑字で書いたとおり「右端の限界」ということは、その(cの)ちょっと右ではf(\zeta)-f(a) > M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}という風に否定が確実に成りたつということが分かる。

以上をまとめてみると、青字の情報を特殊化してとりだして、「cのちょっと左まではf(\zeta)-f(a)\le M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}(不等号が小なりイコール)」が言え、緑字より「cのちょっと右まではf(\zeta)-f(a) > M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}\}(不等号が大なり)」が言える。連続性めいてきた。

不等号の両端に式を書くのが面倒なので、以下
F(\zeta):=[f(\zeta)-f(a)]-[M(\zeta-a)+\eta(\zeta-a)+\eta\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}]
と定義する。すると、先程のは「cのちょっと左まではFは0以下」で「cのちょっと右まではFは正」ということが言える。

今は簡単のために、このcの左右ちょっとの範囲で\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}は定数であるとする。*3すると、fは連続関数であること、Fはfの足し引き定数倍であること、連続関数の足し引き定数倍は連続関数となることより、Fが連続関数であることが言える。連続関数Fが、cのちょっと左まで0以下、ちょっと右まで正なので、F(c)=0が言えた。

最後に、「cの左右ちょっとの範囲で\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}は定数である」の仮定を外す。心配なのは、「cのちょっと左まではFは0以下だったのに、不連続性をつかってぴょんとcで0でない正になってしまうのでは」ということだが、\sum_{\rho_n<\zeta} 2^{-n}が単調増加であることから、この項はFを減少させる方向にしか寄与しない。したがって不連続性を使って「増える」ことは絶対にできない。おわり。

ところで

Dで区切られた区間の各々について、千切れない区間での有限増分の定理をつかって、それを足しあわせるんじゃだめなんですか。

*1:1,2,...とIDを振れるようなIの点の集まり。Dとして[a,(a+b)/2]とかはとれない。

*2:「すべての」があるので、特殊ケースとして得られる。

*3:あとで外せることが分かる。