Atiyah-MacDonaldの「可換代数入門」のProposition 1.11では、
ということが書いてある。この素イデアルの条件を外すと不味いのかなと思って、
n=2で反例を探していたのだがずっと見つからなかった。
しかし、今日n=2だと素イデアルの条件なしでも同様のことが言えてしまうと気づいたので書いておく。
示すことは、
環Aとそのイデアルについて、が成り立っているとする。
このとき、かかのどちらかが成り立つ。
である。背理法で示す。仮に、
(1)、(2)、(3)のすべてが成立していたとする。
仮に、だとすると、となって(1)に反するので、(4)である。
同様に、(5)も成り立つ。(2)、(3)、(4)、(5)より、と
が成り立つようなxとyが存在する*1。なので、(1)よりとなる。
よって、かかのどちらかは成立する。
前者が成立するとする。だが、は定義から、は仮定よりの元なので、もの元である。
これはの定義に反し、矛盾である。後者が成立すると仮定すると同様にが導かれ、矛盾する。
よって、どちらにしても矛盾する。証明おわり。
というわけで少なくともn≧3で探さないと意味がないっぽい。Alloyで探してみようと思う。
2/13追記
id:qnighyさんがn=3で例を見つけてくれました。
Prime Avoidance Lemma で素イデアルの仮定を外した場合2個までは成り立つが3個では成り立たないっぽいやつです pic.twitter.com/Vw1SKD5bUz
— Masaki⊣Hara (@qnighy) 2017年2月13日
2次の項全部で割ってるので有限の環になってます。これならAlloyでも見つけられそう(勉強中)。
加群ぽく考えるのが大事みたいです。
あと、タイトルのprime avoidanceの説明をしてなかったのですが、このAtiyah-MacDonaldのProposition 1.11には
prime avoidanceという名前がついているようで、こんな記事https://en.wikipedia.org/wiki/Prime_avoidance_lemmaがあります。
*1:2/13修正