これは何?
デジタルカードゲーム「MTGアリーナ」のダスクモーンのドラフトで、上手な人たちとそうでもない人たちとのピックを統計データをもとに見比べてみようという記事です。
なんで?
ダスクモーンに限った話ではないのですが、リミテッドのランクが毎回プラチナに行ったあたりから急に壁にあたり種銭切れになりがちで、うまくいったときでもダイヤぐらいだったので、上手な人と自分との差を調べたくなったからです。 調べるといっても、プレイングを見直したところで自分の引き出しにない反省はできないので、客観的に分析しやすい統計データに頼ることにしました。ちなみにダスクモーンのフィニッシュはプラチナ2です(割とうまくいったほう)。
どうやって?
上位帯と下位帯の「差」に注目したかったので、そのために「上位の人は取るけど下位の人は取らないカードは何だろう?」「下位の人は取りがちだけど上位の人は取らないカードは何だろう?」という問を立てました。 ここから「上位帯に上がるためにはどうピックを変えていくべきなのだろう」という指針が得られ、直接的に自分のピックの反省に使えると思ったためです。
そのため、MTGアリーナのリミテッドの統計情報サイト 17Lands.com から統計情報*1にアクセスし、ダスクモーン(DSK)のPremierDraftのGameDataをダウンロードし、解析しました。 この各行は1ゲームの情報が記されていて、「そのゲームをやった人のランク」「そのゲームで使われたデッキ」等の情報が含まれます。これらの行を総合すると、「ランクXの人のデッキには、カードYがZ枚入っている」というデータが集まります。 最初に書きました「下位の人」として「ブロンズ~プラチナの人の平均」を取り、「上位の人」としてミシックを取ります(参考にダイヤモンドの値も目視で眺めました)。そして、
- 平均採用枚数が0.01以上である(ゲストカードとか変なレアとかが入ってきても統計的に意味なさそうだし反省に使えなさそう)
- 「そのカードのミシックでの平均採用枚数」と「そのカードのブロンズ~プラチナでの平均採用枚数」の倍率がある程度大きい。細かく言うと、|log(前者/後者)|>0.1である。
カードに注目してみました。この辺の値は統計的な手法を使って決めたほうがいいのかもしれませんが適当です。採用枚数のほうは、上手い人なら上手く使うのかもな~という「鋸」の採用率をみて、これがぎりぎりひっかかるぐらいにしました。採用枚数の基準は、ある程度の枚数がひっかかったほうが楽しいかなで決めてます。
結果
上位の人は使うけど下位の人は使わないカード
- けだものの圧倒 / 赤緑の昂揚ビーム。
- 裏切り者の駆け引き / 赤の5点火力。生贄で安く打てる。
- ブレイズマイアの境界 / 赤黒レア土地。
- 流血の森 / 赤緑13点土地。
- 機械仕掛けの打楽器奏者 / 赤1/1/1速攻。
- 呪われた録画 / インスタント・ソーサリーをコピーするレア置物。
- 不穏な笑い / 赤黒の指針アンコモンエンチャント。
- 焼殺への恐怖 / 赤6/4/4の4点飛ばすマン。昂揚ボーナスあり。ダイヤだとそうでもない。
- 最後の復讐 / 黒の生贄要求除去。
- ファウンド・フッテージ / 諜報できる手掛かり。
- 光霊噴出 / 青の2ドロー。ダイヤだとそうでもない。
- 光霊灯 / 1/1出してくれる+1装備品。
- 館への鍵 / 土地サーチ+部屋開けアーティファクト。
- 邪悪なシャンデリア / 無色飛行6/4/4。ライブラリ修復つき。
- 画家の仕事場+汚された画廊 / 赤部屋。衝動ドロー+攻撃バフ。
- 異様な灯台 / 赤青13点土地。ダイヤだとそうでもない。
- 覆い越しの凝視 / 赤緑レアのルーティングソーサリー。
- 剃刀族の群れ呼び / 赤5/4/4速攻。1/1出せる。
- 剃刀罠の山峡 / 赤黒13点土地。
- 咆哮する焼炉 + 蒸気サウナ / 赤青レア部屋。火力+追加ドロー。
- 鋸 / サクり台装備品
- 鋸刃の皮膚裂き / 赤黒指標3/3/2。
下位の人は使うけど上位の人は使わないカード
- 軽業のチアリーダー / 白2/2/2。生存で飛行。
- 人百足 / 緑4/3/4到達。
- 付属肢の融合体 / 黒3/3/2瞬速。
- 殺戮箱 / 無色3/2/4。自爆で強くなる。
- ベイルマークのヒル / 黒2/2/2。違和感ドレイン。
- 野球のバット / 緑白指針装備品。
- ベアトラップ / 3点火力アーティファクト。
- 寝癖のけだもの / 赤6/5/6山サイクリング。
- 哄笑する斬鬼 / 黒4/3/3接死で死亡発生時強く登場。これだけlog値が-0.8近く差が顕著!
- 慎重な生存者 / 緑4/4/4。生存でライフゲイン。
- 粘ついた不審獣 / 青4/2/5。攻撃時アンブロ付与。
- 忍び寄る覗き見 / 青2/2/1。エンチャントマナクリ。
- 謎めいた捜査員 / 緑3/2/2警戒。裏カードで強くなる。ダイヤだとそうでもない。
- 教団の治癒者 / 白3/3/3。違和感絆魂。
- 短剣口のメガロドン / 青6/5/7警戒。島サイクリング。ダイヤだとそうでもない。
- 音を立てるな / 青の2要求カウンター。
- 永劫の不屈 / 黒のレア永劫。ライフゲインで相手にダメージ。
- 謎への突入 / 青のアンブロ付与ソーサリー。
- うつろう亡霊 / 青3/1/3飛行警戒。違和感で強くなる。
- 拉致への恐怖 / 白6/5/5飛行。相手も自分も1人追放。ダイヤだとそうでもない。
- 露呈への恐怖 / 緑3/5/4。追加コスト要求。
- 落第への恐怖 / 青5/2/7。
- 虚偽への恐怖 / 青3/3/2カウンター生物。
- 闇への恐怖 / 黒5/5/5。
- 必死の力 / 緑の+2/+2瞬速オーラ。
- 亡者の鍵持ち / 青4/3/3飛行。部屋を開けれる。
- 暴力への屈服 / 黒+2/+2絆魂バットリ。
- 温室+がたつく展望台 / 緑部屋。色なんでも能力+切削回収。
- 鍛えられた随伴者 / 白3/2/3。アタック時破壊不能付与。
- 生垣裁断機 / 緑4/5/5レア機体。ダイヤだとそうでもない。
- 忌まわしい迫力 / 緑破壊不能接死バットリ。
- ハッシュウッドの境界 / 緑白レア土地。
- 業火の幻影 / 赤4/2/3。死亡時火力。
- ジャンプスケア / 白+2/+2飛行バットリ。
- 殺人鬼の仮面 / 黒の戦慄予示つき威迫装備品。
- 救助のけだもの、コーナ / 緑4/4/3踏み倒し生存。
- 生ける電話 / 白3/2/1、死亡時パワー2回収。
- 瘴気の悪魔 / 黒6/5/4飛行。手札コストで除去つき。
- 小麦畑の孤児たち / 白2/2/1。味方タップで強化。
- 取り憑かれた山羊 / 白1/1/1。4/4になれる。
- 紅蓮地獄 / 赤全体2点。
- 猛り狂う憤怒霊 / 赤3/1/4。部屋条件で4/4に。
- 剃刀族の棘頭 / 赤2/2/2レア。ダイヤだとそうでもない。
- 尻込みする優等生 / 白2/2/2生存レア。望まれぬ改作
- 落とし子狩り、リップ / 緑白4/4/4生存レア。
- 刈り鎖の剃刀族 / 赤4/5/3到達。マナフラ受けつき。
- 自然知識の生存者 / 緑5/3/4速攻。生存で土地を3/3に。
- 小さき者の救済者 / 白4/3/4。生存で墓地回収。
- 導く精霊 / 白6/4/5飛行。平地サイクリング。
- 巧みな語り部 / 緑白3/3/3。生存でカウンターおける。
- 苦悩の試練 / 赤でアンブロ付与+5点の変なやつ。
- 間の悪い故障 / 赤の対象変更。
- 望まれぬ改作 / 白の戦慄予示ペナルティつき破壊。
- 悪意ある道化師 / 赤3/2/3。パワー2で強くなる。
- ヴァルガヴォスの執事長、ヴィクター / 白黒3/3/3違和感レア。
- 暴力的衝動 / 赤先制バットリ
何がわかるだろう
まず何がわからないだろう
平均採用枚数を見ているので、そのカードが採用されている枚数が多い/少ないのは、「そのカードが強い/弱いから」というのと「そのアーキタイプが強い/弱いから」という理由が混ざって現われてしまっている。そのことは承知の上で、以下では一旦そのことは忘れて議論することにする。 一応Deck Color Dataというところでtop層とbottom層の勝率というのが見られるんですが、topとbottomってなんですか?
また、そもそも上位層だとピックが苛烈すぎて、強いカードが取れないので変なアーキに「行かされ」ていて、採用カードが下位と比べて歪んでいる可能性がある。
「下位の人は使うけど上位の人は使わないカード」が多い!
そもそもの数の問題として、「下位の人は使うけど上位の人は使わないカード」の量が反対よりもずっと多い。上位帯の人たちは、弱いカードを本当に数合わせですら入れないようにしている/入れなくてすむようなピックをしているようである。下手に「この色でいくなら嫌だけど取るか~」とはせず、本当に弱いカードは突っ撥ねたほうがいいのかもしれない。
上位の人は赤黒を上手に使っていそう
2色の強さは上図のように、「黒を避ける」が基本になるが、それでも上位帯の人は赤黒を上手に活用していることがわかる。一人のミシックの赤黒トロフィーデッキを見てみたが、赤黒を2手目ぐらいから見すえたピックをしていた。作るデッキに赤黒という引き出しを1つ多く持っておいて、裏道として強く組みあげる準備もしておくというのが上位帯の人の強さの秘訣なのかもしれない。反対に「下位の人は使うけど上位の人は使わないカード」に赤黒のカードはほとんどなく、緑系の無難ぽいカードを取っているような印象を受ける。昂揚も上位に多く、色の見方として赤緑黒あたりで構えておく、というのは一つ引き出しとして持っておくべきなのかもしれない。
「下位の人は使うけど上位の人は使わないカード」は不安定なカードが多い
「下位の人は使うけど上位の人は使わないカード」として、「軽業のチアリーダー」や「忍び寄る覗き見」や緑白生存系など、相手が事故っているときに攻めこめるカードが登場しているように見える。これらを使うと運が良ければ結構な勝利ができて成功体験が積めそうだが、そこがランクが上がらない頭打ちの原因になっている、というのも考えなければいけないかもしれない。特に「忍び寄る覗き見」はうまく組めないとただの2/2/1になりがちであまりお値段以上にはならないのかもしれない。少し意外だった。反対に、「上位の人は使うけど下位の人は使わないカード」には4マナ2ドローなど、多少重くても確実な利益をもたらしてくれるカードが多いように思える。
教訓
というわけで、こんな感じにするともしかしたらよいのかもしれない(時間的に実践できなかったが)。
- アーキの引き出しを1つ増やそう。今回は赤黒という「裏道」があるようなので、流れが悪かったときにも逃げ先が作れれば平均勝率が上げられるかもしれない。
- 弱いカードはとにかく拒否しよう。多分色が合わなくても「使える」カードがあるならそっちを取ったほうがマシである。
- 相手の事故を祈らず、確実な利益をもたらすカードで戦えないかも考える。色という以上に、コントロールぽい戦い方も視野に入れてみる。色という以上に、遅いデッキの完成形もイメージとして持っておき、ピックの幅を広げてみる。
*1:Analytics→Public Datasetから見られます